特別インタビュー

FIFAワールドカップカタール2022で
決勝トーナメント進出を果たした
日本代表を率いる森保 一監督が語る新しいリーダー論。

2022.12.02

FIFAワールドカップカタール2022で<br>決勝トーナメント進出を果たした<br>日本代表を率いる森保 一監督が語る新しいリーダー論。

サッカー日本代表を率いてまもなく1年。ベテランと若い選手たちを融合させながら、難しい船出を成功させた50歳のリーダーは、いま、何を考え、どこに向かおうとしているのか――。2022年のW杯カタール大会に向かって走りだした森保 一監督(50)に訊(き)いた。

※本記事はアエラスタイルマガジンWebにて201964日に掲載された記事の再掲載となります

具体的なリーダー像?
それは勝てる人、
結果を出せる人だと思う

アジアカップを終え、6月から始まる国際親善試合とコパ・アメリカの準備に入ったこの日、日本代表監督は、多忙だった1年をこう振り返った。

「アジアカップが終わったあとに、少し家族と旅行する時間をもらいましたが、基本的には休みなのか、仕事をしているのかわからない(笑)、というのが実感なんです。新たな戦力の発掘を含めて、試合の視察を重ね、海外にいる選手の映像をチェックしたり、資料をまとめたり、という日常で、趣味なのか、仕事なのか、切れ目がない。でも、私にとってそれは、本当に幸せなことなんです。自分が楽しいと思うことを仕事としてさせていただいているわけですから」

「楽しい仕事」とはいえ、結果次第では、サポーターや評論家、メディアの厳しい目にさらされるのも事実。ストレスとはならないのだろうか。

「ストレスはまったくないですね。結果が問われる勝負の世界で生きているので、プレッシャーはもちろんありますけど、それをストレスと感じたことはないです。試合に負けたとして、そのとき、試合の前までに自分がどれだけ準備できていたのか、選手の交代のタイミングはどうだったのか、と反省することが一番大事。なんでできなかったんだろうと振り返ったときに、多少自分自身にストレスを感じても、すぐに次の試合に向かって切り替えますね」

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森保は、サッカーのエリート街道を歩んできたわけではない。高校を卒業し、1987年にマツダサッカークラブに入団したときの評価は決して高くなかった。Jリーグ発足前の日本サッカーリーグ時代は、プロ選手は奥寺康彦と木村和司の2名だけで、あとはノンアマ、アマチュア契約で、多くは会社で働きながら練習するというスタイルだった。森保もまた、入団して、マツダ運輸(現・マツダロジスティックス)に配属され(のちにマツダ本社へ)、荷物の梱包や体育館の管理人といった仕事に携わりながら、練習や試合をこなす日々だった。

その後、マツダとプロ契約した森保は、1992年、一躍注目を浴びることになる。ハンス・オフトが日本代表監督に就任し、この23歳の無名選手をいきなり招集したからである。ほかの代表選手でさえ、「えっ、モリヤスって誰?」と尋ねるほど地味な選手だった。が、5月に対アルゼンチン戦で先発出場した森保は、以来、中盤の要として起用されつづける。

プロリーグがスタートすると、サンフレッチェ広島でもレギュラーの座を獲得。堅実で、労を惜しまぬプレーは、まさに森保自身の生き方の表れだった。

3年間のサラリーマン時代を森保はこう振り返る。

「社会人といっても大して仕事はしてないんですけど、上司がいて、ひとつのモノを力を合わせてつくっていくという現場で学んだことは多かった。みんなの血と汗と涙でひとつのものができるということを実感しました。また、アマチュアからプロへと変わっていくなかで、練習場やサポーター、メディアからの注目とすべての環境が右肩上がりで上がっていく時代にサッカーをやりつづけられたことは幸せだったなと思います」

2004年に選手生活に区切りをつけた森保は、広島の強化部コーチに就任し、以来、コーチングの世界を極めつづける。2012年に広島のトップチーム監督に就任すると、2年連続でチームを優勝に導くなど手腕を発揮。2017年には五輪監督に、翌年4月からは西野 朗日本代表監督のもとでコーチとしてW杯ロシア大会を戦った。その西野からバトンを受け取ったのは、7月のことだった。

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1年前の監督就任会見で、森保は、こう宣言している。

「日本サッカーの発展のためにトライするところは結果を怖がらずにやっていきたいと思います。トライをする段階で痛い思いをすること、失敗することもあると思いますけど、ビビらずに正しいと思うことをやりきる。そこで道が続いていくのか、断たれるのか、それはプロの世界では当たり前のこと。次につながる、発展する正しいことを実践していきたい」

就任以来の戦績は、11勝2敗1分け(5月末時点)。トライしつつもきちんと結果もまた残してきたのだ。森保自身が思い描くリーダー像は明確だ。

「具体的なリーダー像があるとすれば、勝てる人。結果を出せる人だと思います」

そして、こう続けた。

「私は、選手時代から本当に素晴らしい指導者の方々に指導していただいた。たとえばオフト監督からは基本の重要性、バクスター監督からは組織のつくり方やピッチ内外での戦うアプローチの仕方、ペトロビッチ監督からは攻撃的な考え方など、サッカー観が変わるようなことをそれぞれから教えてもらいました」

日本人の監督たちからは選手たちとのコミュニケーションの取り方も学んだと言う。

「チームには当然いろんなルールがあるわけですが、そのなかで、いわゆる〝やんちゃな選手〞が持っているサッカー選手としてのエネルギーやパワーを最大限に引きだしてあげるということをベガルタ仙台在籍時に学びました。もちろん規律は守らなければならないけれど、やんちゃな選手の勢いをそぐことなくプレーしてもらうにはやはり細やかなコミュニケーションが欠かせないと思います」

そして、いまトップに立つ身になってこう思うのだという。

「たくさんの監督やコーチ一人ひとりからいいとこ取りをさせていただいて、自分らしいスタイルで仕事ができれば、といまは思っています。ただ、結局のところ、自分本来の姿ではない監督を演じても選手たちにはたぶん伝わらない、響かないと思うんです。監督をやっているときだけでなく、普段の生き方として、私は、できるだけ自分らしくということを心がけて取り組むようにしているんですが、監督でもそれは変わらない、ということですね」

「では、森保監督らしさって何ですか」と尋ねるとこう即答した。

「指導者像で言うと、引っ張っていくタイプではないと思います。選手やスタッフに対して、目標と方向性は示さなければならないと思いますが、カリスマ的に俺についてこい、俺は正しいんだと導くより、みんなで考えてやっていこうというスタイルなんだと思う。どちらかといえば、先頭に立つよりは、後ろにいながら、全体を見ていくという感じでしょうか」

他人の言葉に素直に耳を傾け、選手たちと誠実に接しつつ、人を動かしていく静かな闘将。それこそがまさに森保自身の生き方でもあるのだろう。

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先輩たちの経験を感じ、
未来へとつなげたい──

森保の生真面目さ、細やかさは、ゲーム中にもしばしば見られる。たとえば、小さなメモ帳に思ったことをひんぱんに書き込むこともそのひとつだ。

「本当は、メモを取らずに自分の頭の中に試合で起こっているすべての現象を映像としてインプットして、戦術が効いてる点、あるいは修正しなければならない点を整理できればいいんです。でも、すべての成果と課題を覚えてはいられないので、書き留めているんです。やはり、試合中はメモを取らないほうがいいんです。書いている時間は試合から目を離してしまっているわけですからね」

こうして取られたメモは、ハーフタイムで効果を発揮する。短い時間のなかで、余すところなく修正ポイントが選手に伝えられ、後半のゲームに生かされるのだ。

森保が腐心したのは、チーム内の世代交代だ。中島翔哉、南野拓実、堂安 律、室屋 成といった若手選手と吉田麻也、長友佑都といったベテランたちとの融合である。森保はこう説明する。

「これまで携わってきた監督がいて、選手がいて、スタッフがいて、いまがあり、未来があるわけです。歴史をつくってきたベテラン選手が培ってきた経験をいまの経験の浅い選手たちに背中で見せてもらう場をつくりながら未来へとつなげていきたい。ただ、言葉でそう言うのは簡単ですけど、何が正解かは本当にわからないんです。でも、いままで頑張ってきた人たちを、ただ世代交代といってスパッと切って、若い経験の浅い選手、将来有望だと言われる選手にそのポジションを与えても、中心選手になって、スムーズに成長していくのはなかなか難しい。先輩たちの経験を感じながら、監督、選手、人として、進んでいければいいなと思っています」

五輪代表監督も兼任している森保監督は、2020年の東京大会への準備の一方で、9月には、W杯カタール大会への出場をかけた2次予選に挑む。

森保 一の真価を示すときがいよいよやってきた。

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「日本代表の監督に就任して、見られる立場になったことで、きちんとした着こなしができるスーツが大切だと改めて感じています。代表チームとして行動するときには、しゃきっとした姿をサポーターの方や一般の方に見てもらうことも大事。選手たち自身もまた、スーツをまとうことで、自然と姿勢がよくなって、態度も気持ちも引き締まっていると思います」

ダンヒルが「SAMURAIBLUE」のサッカー日本代表のオフィシャルスーツを手がけて20年。日本代表の監督や選手たちの戦う気持ちを支えつづけてきたスーツである。メイド トゥ メジャーのスーツとシャツは全国のダンヒルストアで、その他のオフィシャルアイテムはオンラインでも購入可能。

(問/ダンヒル 03-4335-1755www.dunhill.com

プロフィル
森保 一(もりやす・はじめ)
1968年8月23日生まれ。長崎県長崎市出身。元プロサッカー選手で、サンフレッチェ広島監督などを経て、現在は日本代表監督兼U-22代表監督を務める。

〈取材協力〉 アルフレッド ダンヒル 銀座本店
東京都中央区銀座2-6-7 03-3562-1893 営業時間/11:00~20:00 休日/無休

「アエラスタイルマガジンVOL.43 SUMMER 2019」より転載

Photograph: Yoshihiro Kawaguchi(STOIQUE)
Text: Haruo Isshi

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