スーツ

スーツに合わせる靴には条件がある!
押さえておきたいルールとおすすめブランド

2022.09.08

写真・図版

スーツに合わせる革靴の選び方がわからず、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。革靴を選ぶときは、スーツとの相性や着用シーンを考慮し、適した種類やデザインのものを見極める必要があります。この記事では、革靴の主な種類を紹介したうえで、スーツに合う革靴の選び方やおすすめのブランドなどについて解説します。

革靴の種類

写真・図版

革靴にはさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴があります。各種類の特徴を押さえることで、場面に合った革靴を選べるようになるはず。ここからは、代表的な革靴の特徴について詳しく解説します。

プレーントウ

プレーントウは、つま先部分に特別な装飾が施されていない、シンプルなデザインの革靴です。ひも靴であるため、内羽根式か外羽根式かによってデザインが変わります。カジュアルからフォーマルまで、幅広いシーンで履ける靴だと言えるでしょう。

デザインがシンプルなゆえに、作りの良しあしが如実に表れる靴でもあります。良質なプレーントウは、丸みを帯びた美しいフォルムや革の上品な質感が楽しめます。便利に使い回せる靴であるために、ソールが摩耗しやすいことがプレーントウの宿命です。定期的にソールを触って厚みを確かめ、薄くなっている場合は補修を依頼するとよいでしょう。

ストレートチップ

つま先部分に横一直線のステッチが入っている革靴がストレートチップです。最も格式の高いドレスシューズとされ、さまざまな場面へ履いていくことができます。フォーマルシーンで使う革靴を選ぶときは、内羽根式のストレートチップにしておけば間違いないでしょう。ちなみに、ストレートチップは「ストレート・トウ・キャップ」と呼ばれることもあります。

ストレートチップの特徴は、外観の美しさを保ちやすいことです。革靴は長く履くうちにシワが寄りやすいものですが、切り替えが入ったストレートチップの場合、つま先部分にシワが寄りにくくなっています。革靴は本来長く愛用するものなので、美観を保てるのはうれしいポイントです。ストレートチップはビジネスシーンでもよく履かれており、ヒールが削れやすい特徴があります。ヒールが削れた状態の革靴は背後から見られたときに印象が悪いため、早めの補修を心がけましょう。

ウイングチップ

ウイングチップは、つま先部分にW型の切り替えが入っています。この切り替えが鳥の翼のように見えることから、ウイングチップという呼び名が付けられました。なお、ウイングチップというのはアメリカにおける呼称で、イギリスでは「フルブローグ」と呼ばれることが多いです。

ウイングチップの特徴は、メダリオンやパーフォレーションと呼ばれる穴飾りが全体に施されていることです。クラシカルでおしゃれな雰囲気がありますが、ややカジュアル寄りなのでフォーマルやビジネスには向きません。アッパーに華やかな装飾が施されたウイングチップを履くときは、糸のほつれに注意してください。1箇所ほつれると周囲のほつれにつながっていくため、早めの対処が必要です。

モンクストラップ

多くの革靴にはひもが使われていますが、モンクストラップではベルトをバックルで固定します。かつてアルプス地方の修道士(モンク)が履いていたサンダルを原形としてデザインされたため、モンクストラップという名称が付けられました。モンクストラップでは、プレーントウのように装飾のないデザインが一般的です。ストラップが1本のものをシングルモンク、2本のものをダブルモンクとそれぞれ呼ばれています。ダブルモンクのほうがシングルモンクよりも華やかでカジュアルな雰囲気があります。

基本的に、スーツに合わせられるのはひも靴だけとされていますが、モンクストラップは例外です。ややカジュアルな印象はあるものの、ときには気分を変えてモンクストラップをスーツに合わせてみるのもよいでしょう。

モンクストラップでは、フィット感を高めるためにバックルをゴムで固定しています。フィットがゆるいと感じたときは、バックルのゴムを交換するようにしてください。

Uチップ(Vチップ)

UチップはアッパーにU字型のステッチが入った革靴で、Vチップと呼ばれることもあります。アッパーをU字型に縫い合わせる方法のことをモカシン縫いといいます。つまり、モカシンのような形をした革靴だと考えればイメージしやすいでしょう。靴の内側のスペースに余裕が生まれる縫い方であり、足の幅が広い人や、甲が高い人でも履きやすい革靴です。

使い勝手のいい靴ですが、どちらかと言えばカジュアル感が強いため、ビジネスシーンにはあまり向きません。おしゃれな雰囲気を演出できるので、プライベートでスーツを着るときのために1足用意しておくのもよいでしょう。ちなみに、靴ベラを使わずに革靴を履きつづけていると、かかとの内側部分の革が破れる恐れがあるので注意してください。

ホールカット

ホールカットとは、1枚の革で包み込むように作られる革靴のことです。かかと部分にしか革の継ぎ目が見えず、極めてシンプルなデザインで優雅な雰囲気があります。傷のない上質な1枚革を厳選する必要があり、それを靴の形に成型するのが難しいため、多くの手間と高い技術力なしには完成し得ない高級な革靴です。

ホールカットはデザインの上品さと高級感がありながら、フォーマル向け、カジュアル向けといった性格が明確に定まっていません。洗練された着こなしが求められることは間違いありませんが、冠婚葬祭などに履いていくのは控えるのが無難でしょう。ホールカットには上質な皮が使われているため、定期的なメンテナンスで良好な状態を保つことが重要です。

サイドエラスティック

サイドエラスティックとは、アッパーの両側にエラスティック、つまりゴム部分を設け、着脱しやすいように工夫された革靴です。靴ひもがなく、着脱の手間がかからないため、靴を脱ぐ機会の多い日本では重宝するアイテムだと言えるでしょう。

多くの場合、エラスティック部分には革帯が並べられており、革靴の優雅さが損なわれないデザインとなっています。ストレートチップやウイングチップなど、アッパーのデザインにはさまざまなバリエーションがあります。ゴムが劣化するとフィッティングがゆるくなるため、早めに交換することが大切です。スリップオンではありますが、比較的フォーマル度の高いエレガントな革靴です。

ローファー

ローファーはひものないスリップオンで、モカシン縫いが特徴の革靴です。着脱が容易なことから、「怠け者」を意味するローファーという呼び名が付けられました。豊富な種類があり、代表的なものとしては「ペニーローファー」「タッセルローファー」「ヴァンプローファー」「ビットローファー」などが挙げられます。

ペニーローファーはアメリカで1950年代に流行したアイビールックを象徴するアイテムで、コインを挟めるストラップがアッパーにまたがっています。タッセルローファーは甲の部分に房飾りがあしらわれており、アメリカでは弁護士の靴とされている、ローファーのなかでは格式の高い靴です。ヴァンプローファーはシルエットがシャープで飾りけのないタイプで、大人の色気を感じさせます。ビットローファーは甲の部分に「ホースビット」という馬具に似た金具を飾ったスリップオンで、1950年代にイタリアを代表するファッションブランドのグッチが生み出しました。

デッキシューズ

デッキシューズはモカシンのようなデザインの革靴で、靴底のソールには切り込みが刻まれています。その名のとおり、もともと船乗りが甲板で履くための靴として作られました。甲板で足を滑らせると落水の危険があるため、濡れた場所でもグリップ力を維持できるように、ソールに工夫が施されています。デッキシューズのアッパーには、耐水性の高いオイルレザーを使うのが一般的です。なお、モカシン縫いのU字部分の糸がほつれやすいため、ほつれ部分が広がる前に処置する必要があります。

スーツに合う革靴の選び方

写真・図版

革靴には多彩な種類があり、どれでもスーツに合わせられるわけではありません。スーツに合う革靴の条件を押さえ、適したものを履くようにしましょう。ここからは、スーツに合う革靴の選び方について解説します。

内羽根式と外羽根式を使い分ける

ひものある革靴は、内羽根式と外羽根式の2種類に大きく分けられます。内羽根式とは、「鳩目」と呼ばれるひもを通す穴がアッパーと一体になっているタイプのことです。羽根部分がアッパーの内側に潜り込んでおり、ひもを締めると羽根同士がぴったりと密着します。羽根が開かない分、ひもによるフィッティングの調節は難しいものの、見た目が上品でエレガントな雰囲気が漂います。

外羽根式とは、鳩目のある羽根部分が外側に開き、アッパーの上に乗っているタイプのことです。外羽根式の場合、ひもをしっかりと締めても羽根と羽根の間には隙間が残ります。足にぴったりフィットさせることができ、内羽根式よりも着脱が簡単です。

この2種類のうち、より格式が高いのは内羽根式です。フォーマル度の高い場面や、大切な会議などでは内羽根式の革靴を選ぶのがよいでしょう。普段のビジネスシーンでは、より実用性が高い外羽根式の革靴を履くことをおすすめします。外羽根式は疲れにくく、営業などで動き回るビジネスマンにも使いやすいアイテムです。内羽根式と外羽根式を正しく使い分け、シーンに適した革靴を選ぶようにしたいものです。

基本はひも靴を選ぶ

基本的に、スーツに合わせられるのはひもの付いた革靴です。ローファーなどはカジュアルなイメージが強いため、プライベート以外では履かないようにしましょう。ただし、ひものない靴でもモンクストラップだけは例外的にスーツと合わせてもよいとされています。フォーマルシーンではおすすめできませんが、普段のビジネススタイルでモンクストラップを採り入れるのは問題ありません。

着用シーンに合わせる

革靴のフォーマル度は種類ごとに定まっており、着用シーンに合わせて選ぶことが大切です。革靴のなかで最も格式が高いのは内羽根式のストレートチップです。冠婚葬祭からビジネスまで対応できるため、1足は用意しておくことをおすすめします。内羽根式のプレーントウも格式が高いため、葬儀や結婚式で着用可能です。ウイングチップはカジュアル度が高く、失礼な印象を与える恐れがあるため、冠婚葬祭では避けたほうがよいでしょう。

ビジネスシーンでも、ストレートチップまたはプレーントウを選ぶのが無難です。オフィスの雰囲気などによっては、モンクストラップやホールカットをスーツに合わせることもできます。Uチップやデッキシューズなどはカジュアル感が強いのでビジネスシーンには向きません。

パーティーに参加するときも、フォーマルな会場なら内羽根式のストレートチップまたはプレーントウが無難です。ただし、二次会などのカジュアルなパーティーであれば、ウイングチップなどの華やかな革靴でおしゃれを楽んでもよいでしょう。

色の相性を考える

スーツと合わせる革靴の色は、黒または茶色が王道です。チャコールグレーやダークネイビーなど、暗いトーンのスーツは黒の革靴と相性がいいでしょう。一方、トーンが明るいスーツには茶色の革靴を合わせるのがおすすめです。茶色の革靴はトーンによって大きく印象が変わるため、コーディネートがうまくまとまるように色合いを工夫してください。

小物の色を統一することも重要なポイントです。革靴とベルトの色が違うと、コーディネート全体にちぐはぐな雰囲気が漂います。カバンなども含め、革製の小物はなるべく同系色で統一できるようにしたいものです。

サイズ選びにも気を配る

サイズが合わない革靴を履いていると、足の痛みが気になるなど、仕事の効率にも影響を与えかねません。そのため、自分の足にぴったりとフィットする靴を選ぶことも重要です。まず、1日で最も足がむくむ時間帯である夕方に靴を選ぶようにしましょう。そして、革靴にはあらかじめ捨て寸が設けられているため、スニーカーよりも1cmほど小さいサイズを選ぶのが基本です。

試着するときはかかとを合わせ、つま先に余裕があるか、幅が合っているかといったポイントをチェックしてください。最後に、実際に歩いてみてサイズが合っているかどうかの最終確認を行いましょう。

スーツに合う革靴のおすすめブランド

長く愛用できる革靴を手に入れるためにも、品質に定評のある主要なブランドを押さえておきましょう。ここからは、スーツに合う革靴のおすすめブランドを紹介します。

JOHN LOBB(ジョンロブ)

靴職人のジョン・ロブによって1849年にシドニーで設立されたのがJOHN LOBB(ジョンロブ)です。当初はゴールドラッシュのオーストラリアで採掘者用のブーツを作って成功を収め、1866年にロンドンへ戻ってからは上流階級向けの革靴でさらに名声を上げました。1902年にパリへ進出してからも評判は高まりつづけ、現在では世界中に店舗を構えています。「キング・オブ・シューズ」とまで称賛されるブランドへと成長したジョンロブは、革靴の愛好家にとって無視できない存在です。

ジョンロブの革靴の特徴は、機能性とファッション性を高いレベルで兼ね備えていることです。英国の革靴には機能性を重んじる伝統があり、流行に左右されない靴を作りつづけるブランドは数多くあります。しかし、ジョンロブでは流行も柔軟に採り入れ、伝統的な風格とエレガントなデザインを両立させています。選び抜かれた素材を使い、職人の確かな技術が注ぎ込まれたジョンロブの革靴は、一生に一度は履いておくべきアイテムだと言えるでしょう。

EDWARD GREEN(エドワードグリーン)

EDWARD GREEN(エドワードグリーン)は、革靴の本場である英国で1890年に創業されたブランドです。エドワードグリーンの歴史はノーザンプトンの小さな工場から始まりましたが、創業者のエドワード・グリーンは才気煥発の靴職人として瞬く間に名を上げていきました。創業者が掲げた「でき得る限りの上質を求める」という哲学にのっとり、履き心地のよさや頑丈さ、洗練されたデザインにこだわった靴作りは今日でも続いています。最高級のカーフスキンを材料に、すべての靴は熟練の職人の手作業によって作られています。

その歴史のなかで生み出した名作ラストや独自のディテールは、業界に大きな影響を与えてきました。アーネスト・ヘミングウェイやコール・ポーターなど、名だたる芸術家に愛用されていたこともエドワードグリーンの品質の高さを証明しています。本格的な英国の革靴が欲しいのであれば、まずはエドワードグリーンを検討してみるのがいいでしょう。

J.M. WESTON(ジェイエムウエストン)

フランスのリモージュ地方で1891年に創業されたブランドがJ.M. WESTON(ジェイエムウエストン)です。リモージュ地方は革なめしと加工の長い歴史を持つ地域で、創業者エドゥアール・ブランシャールによってここに靴工場が設立されました。その後、グッドイヤー製法などを採り入れながらエレガントな革靴を生み出しつづけ、フランスの上流階級に愛されるブランドへと成長していきます。

ジェイエムウエストンを代表するモデルが、1946年発表の「ローファー180」です。独自のシルエットを携えたこのローファーは発売当時から変わらない形で作られており、現在ではフレンチエレガンスのアイコンとして広く愛されています。既存の秩序への疑念が肥大化していた1960年代のパリでは、多くの若者がジェイエムウエストンのローファーを履いていました。父親のローファーを素足で履くスタイルが、彼らの反抗心を表現する手段として広く受け入れられていたのです。ジェイエムウエストンの革靴は、既存の概念にとらわれない自由な表現の象徴だと言えます。

ALDEN(オールデン)

ALDEN(オールデン)はアメリカのマサチューセッツ州ミドルボロウで1884年に創業されたブランドです。コードバンなどの最上級の素材を使い、フィット感の高い革靴を供給しているオールデンは、アメリカントラッドスタイルには欠かせない存在です。デニムパンツやバッファローチェックシャツなど、アメリカンなカジュアルアイテムに合わせる革靴として、オールデンをおいて、ほかにふさわしいブランドはまず考えられません。

オールデンは1970年代から医療用矯正靴の分野に乗り出し、革靴の履き心地を徹底的に追求してきました。オリジナルの矯正サポート技術「フットバランス」を採用したモディファイドラストは、革靴の快適性に革新をもたらしました。長時間歩いても疲れない革靴を求めるのであれば、まずはオールデンを試してみてください。

CROCKETT&JONES(クロケットアンドジョーンズ)

CROCKETT&JONES(クロケットアンドジョーンズ)は、1879年に英国のノーザンプトンでチャールズ・ジョーンズとジェームズ・クロケットによって創業された老舗ブランドです。英国の伝統的な靴作りを受け継いでおり、優雅で品質の高い革靴を共有しつづけています。クロケットアンドジョーンズは世界で最も豊富なラストを保有しているとされており、デザインのバリエーションが豊かであること、素材選びのノウハウに優れていることなどがその特徴です。オーソドックスで汎用性の高い「ケント」やパーフォレーションが美しい「コベントリー」など、コレクションは粒ぞろいなので自分に合った革靴も見つけやすいでしょう。

まとめ

革靴にはさまざまな種類があり、スーツに合わせるときはシーンに適した革靴を選ぶ必要があります。内羽根式のストレートチップやプレーントウはさまざまなフォーマルシーンで通用するため、1足は用意しておくといいでしょう。ビジネスシーンで動き回ることが多い場合は、履き心地のいい外羽根式の革靴を用意しておくと安心できます。プライベートであれば、スーツにローファーなどを合わせてカジュアルダウンするのもおすすめです。また、長い歴史がある革靴のブランドにはそれぞれ異なった魅力が備わっています。気になったブランドのラインアップから、長く愛用できる革靴を選んでみてください。

買えるアエラスタイルマガジン
AERA STYLE MARKET

装いアイテム

おすすめアイテム

あなたへのおすすめ

トレンド記事

  1. 写真・図版

    WBCで躍動する侍ジャパンがまとうのは
    ユニクロの感動ジャケット&感動パンツ
    世界の“UNIQLO”から目が離せない。

    週末の過ごし方

    2023.03.17

  2. 写真・図版

    マッチと町中華。
    ギンギラギンにさりげなく、変わらぬ“うまい!”を求めて
    【前編/赤坂珉珉】

    週末の過ごし方

    2023.03.20

  3. 写真・図版

    町田啓太さんの先出カット第二弾を公開。
    アエラスタイルマガジン春夏号は3月24日(金)発売!

    週末の過ごし方

    2023.03.15

  4. 写真・図版

    町田啓太、沖縄にて。

    特別インタビュー

    2023.03.17

  5. 写真・図版

    上白石萌歌さんがいざなう、東京“名建築/名作デザイン”散歩
    第1回 The Okura Tokyo

    週末の過ごし方

    2023.03.17

紳士の雑学