カジュアルウェア

ファッショントレンドスナップ107
愛されるデニムシャツの着こなしのポイントは?
ぱっと見ではわからない隠れテクニックを発見。

2021.06.09

ファッショントレンドスナップ107<br>愛されるデニムシャツの着こなしのポイントは?<br>ぱっと見ではわからない隠れテクニックを発見。

ジーンズは日本のカジュアルパンツの分野では、人気の上位を50年以上キープしています。こうした文化が生まれた背景には、戦後一気にアメリカ文化が浸透したこと。なかでもジーンズはアメリカのファッションの代表選手で、ハリウッドスターやミュージシャンがこぞってはいていたこともあり、あっという間に広まりました。70年代になると地方にもジーンズショップができ、アメリカ産、国産のジーンズが手軽に買えるように。

この現象が、日本と似たような敗戦を迎えたイタリアでも起こったかというと、日本ほどアメリカのジーンズをかっこいい、まねしてみようというような大流行は生まれなかったようです。そのため、日本ではファッションに興味がある人なら、リーバイス、リー、ラングラーといったブランドの名前を知っていますが、これがイタリアの場合となるとファッション関係者でさえもリーやラングラーの存在を知らない人がかなりいます。

現在でも、ミラノに行くとリーバイスは見つけられてもほかのアメリカのデニムブランドは簡単には見つけられません。 アメリカ製のウエスタンシャツなどに至っては至難の業。

これは、アメリカ文化をよしとしない風潮が根強くあったからではないかと思います。こうした感情は、イタリア人のマクドナルドなどのファストフード嫌いと似ています。ちなみに、マクドナルドの1号店は1986年にローマでオープンしていますが、ケンタッキーフライドチキンに至っては2014年までなかったのですから……。イタリア人の母国愛、新しい文化に対するアレルギー反応は日本人には想像できないものがあるのです!

またまた前置きが長くなりましたね。何が言いたかったかと言うと日本では一般的なアメリカのデニムブランドの商品がイタリアではまだまだマイナーだということ。なかでもウエスタンシャツは超珍品扱いでしたが、2年くらい前から徐々にトレンドアイテムに仲間入りしているという感じです。

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というわけで、今回のジェントルマンが着ているのは、いまイタリアで人気高騰中のウエスタンシャツ。実は、ここまでディテールを忠実に再現したデニムシャツは、いままでありそうでなかったのです。

生地がデニムやダンガリーで、デザインはオーソドックスなドレスシャツというのはありましたが、このジェントルマンのような完璧なアメリカ仕様のシャツを着た人を目にするのはまれでした。

どこが違うかと言うと、フラップが付いた胸ポケットが両側にあり、肩のヨーク(切り返し)と呼ばれるパーツがくの字にカットされ、ボタンがパール色のスナップ式というところ。

もっと細かく言えば、襟の形もイタリアのシャツではあまり見かけない、先がとがったレギュラーカラーの変形デザインで、芯材がソフトというのもイタリアではほとんど見かけません。

それがここ4〜5年前くらいからイタリアのシャツブランド製のそうしたディテールを採り入れたシャツが出まわるように。どれも、生地の厚みやシルエット、洗いの加工などをイタリア流にアレンジしているので、本場アメリカのものにはない都会的で洗練された雰囲気がプラスされています。

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全身を見ると日本のウエスタンシャツの着こなしにはない、イタリア流の技がかなり盛り込まれています。

まずは、デニムシャツの袖はコンパクトにまくりあげていますね。パンツはかなり細身で色はグレーがかったグリーン。ここがアメリカ的な太めのシルエットのチノパンでは、このようなモダンな感じは出せません。靴はコンバースと同じようなハイカットのスニーカーですが、よく見るとレザー(スエード?)のようです。スニーカーが丸見えするくらいまで、パンツの裾をロールアップしているのも見逃せません。

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このジェントルマンの着こなしで個人的にいちばん刺さったポイントは、このベルトとその先っぽの垂らし方とこの時計。

ベルトは、レザーのメッシュベルトですが、ちょっと細身。ここが、ジーンズ向きの太めレザーベルトではこの雰囲気は出ません。それと、長めのベルトにすることで、その先端を垂らしています。これは、狙ってやっていることであって、痩せたからベルトが余っちゃった……ということでは決してないのです。

このベルト垂らしのテクニックは今季のレディースのファッショントレンドのひとつで、インスタとかを見ると、カラフルなベルトをこれでもか!というくらい垂らしています。

日本ではウエスタンシャツを着ている人は、手首にネイティブアメリカンのジュエリーなどを着けることが多いのですが、このジェントルマンはカルティエの時計をすることで、カントリーテイストを消し、エレガントな雰囲気をほのかに薫らせています。この辺のさじ加減、イタリア人は天才的。

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ウエスタンシャツ¥27,500/ボルゾネッラ、ベルト¥39,600/ファウストコラート、パンツ¥40,700/ピーティー トリノ(以上リング東京 03-3497-5577 https://ring-store.jp/
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イタリアのシャツブランドのボルゾネッラ。そのウエスタンシャツは、アメリカブランドにはないやわらかいデニム生地を使い遊び心が満載。ボタンが花柄になったのが1カ所だけあるなど芸が細かい!

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こちらはファウストコラートのベルトのバックル。なんと細かな模様が入っています! これは、他人にはわからない細かな細工。ウエスタンベルトのようなアクの強いバックルはさすがに付けられないけど、プレーンなものだと物足りないという方に最適な一本です。

掲載した商品はすべて税込み価格になります。

トレンドスナップのまとめはこちら
(https://asm.asahi.com/knowledge/12060270)

プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに
通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こな
しを求めたトレンドウオッチを続ける。

Photograph & Text:Yoichi Onishi

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