週末の過ごし方

絶景アート・オーベルジュ、
下瀬美術館で過ごす休日。

2024.05.13

絶景アート・オーベルジュ、<br>下瀬美術館で過ごす休日。

瀬戸内海に面した「下瀬美術館」は、海辺に立つという一点で、すでに特異なキャラクターを示しているのだろう。

館内に入り、エントランス棟を突き抜けると、水面上のカラフルな可動展示室越しに宮島が目の前に現れる。厳島神社が鎮座する信仰の島だ。水盤の先には宮島のみならず、阿多田島、江田島などの島々が前後左右に連なり、瀬戸内海と大小の島々がこの美術館のバックボーンとなっていることが理解できる。

この素晴らしき借景を有する「下瀬美術館」の広さは、約4.6万平米。東京ドーム約1個分の面積だ。もちろん、その土地すべてが美術館の敷地というわけではない。日本でも珍しいオーベルジュSimose Art Garden Villaを併設した美術館で、周辺に宿泊コテージや庭園が点在するというなんともぜいたくなアート複合施設なのだ。

  • 下瀬美術館02
    ミラーガラスで覆われた美術館のエントランス棟。
  • 下瀬美術館03
    眼前に広がる島々とカラフルな可動展示室。

「SIMOSE」の立ち上げからプロジェクトにかかわり、営業、プロモーションを担当するディレクターの目黒真一さんはこう説明する。

「ここは、もともとは素通りされるような何もない海辺の土地でしたが、設計を依頼した建築家の坂 茂さんがそのポテンシャルを引き上げてくれたおかげで、素晴らしい美術館を中心としたアート複合施設になりました。坂さんの設計した10棟のヴィラに囲まれ、空間を歩いているだけでウキウキとしてきて、楽しめるようになっています。建築物や借景といった“箱の力”が素晴らしいので、これからさらに中身のコンテンツを高めていったら、すごいことになると思っています。美術館としては街から離れた立地ではあるけれど、目的地となりうる、広域観光の拠点として満足していただける場所になると感じています」

  • 下瀬美術館04
    SIMOSE French Restaurantのオープンキッチン。
  • 下瀬美術館05
    地元中心に食材を厳選。シンプルにして滋味深い味わい。

美術館でアートを楽しんだあと敷地内を散策し、食事を楽しみ、個性的な建築物を味わいつつ宿泊する。目黒さんは、ここを「アート・オーベルジュ」と名付け、「重層的に体験の深みが増すアート複合施設」と位置づけている。

  • 下瀬美術館06
    水辺のヴィラ。5棟あり、すべて内装が異なる。
  • 下瀬美術館07
    森のヴィラ内「ダブルルーフの家」の絶景バス。

「下瀬美術館」の開館は、2023年春。まる1年を迎え、現在、開館1周年記念として『加山又造 ――革新をもとめて』展が開催されている(4月14日~6月30日)。その意義を目黒さんはこう語る。

「加山又造さんは京都のご出身ですが、祖父が明治大正期に広島を中心に活躍された田辺玉田さんという画家でした。加山さん自身もここ大竹の隣町・岩国で終戦を迎えられていたりと、ほかにもいろいろなご縁があって、今回の開催となりました。加山家にご協力いただき、『蒼い日輪』をはじめとする、日本画の旗手の作品群を展開できたことは、見に来ていただける方、さらには他の芸術家の方たちへの刺激を含めてとても意義深いこと。これからもブラッシュアップを続け、外とのつながりも広げていきたいと思っています」

  • 下瀬美術館08
    加山又造『蒼い日輪』(1959年)。
  • 下瀬美術館09
    加山又造『黄山雲海』(1995年)。

施設内には、「エミール・ガレの庭」と名付けられた庭園もある。工芸家としてだけでなく、植物学者としても活動したガレの作品に登場する草花を中心に、瀬戸内の植生に合わせた植物で構成されている。

アート、建築、食、植物、そして偉大なる借景――。下瀬美術館での一日は、無限の可能性と広がりを示しつつ、ゆったりと豊かに過ぎてゆく。

下瀬美術館10
山種美術館所蔵の加山又造『華扇屏風』を本画とする陶板美術作品。

『開館一周年記念 加山又造 ――革新をもとめて』
会期/2024年6月30日(日)まで
開館時間/9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日/月曜(祝日の場合は開館)
観覧料/一般 1800円、学生 900円(中学生以下無料)

美術館/下瀬美術館
広島県大竹市晴海2-10-50
0827-94-4000
https://simose-museum.jp/

アート・オーベルジュ/Simose Art Garden Villa
広島県大竹市晴海2-10-50
0120-907-090
https://artsimose.jp/villa/

Text: Haruo Isshi
Photograph: ©SIMOSE

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