週末の過ごし方

シャトルバスでのアートホッピングや食べるアートの提供も。
アート&カルチャーの「いま」に触れるアートウィーク東京が開催!

2025.11.05

シャトルバスでのアートホッピングや食べるアートの提供も。<br>アート&カルチャーの「いま」に触れるアートウィーク東京が開催!

東京を舞台とした年に一度の現代アートの祭典「アートウィーク東京(以下、AWT)」が、本日115日(水)から119日(日)まで都内各会場で開催される。

AWTは、東京の現代アートの創造性と多様性を国内外に発信することを目的とし、2021年にスタート。文化庁の協力および近代美術の国際的アートフェア「アートバーゼル」とも提携する本イベントは、都内50以上の美術館・ギャラリーが開催する展覧会のほか、有識者を招いたシンポジウム、東京の街にたたずむ住宅の名建築を巡るツアーやキッズ・ユース向けのガイドツアー&ワークショップなど、AWT独自のプログラムや関連イベントを開催。多角的な展開を通して、幅広い鑑賞者層にアートアクティビティの体験機会を創出することで、東京のアート&カルチャーの「いま」を知ることができる。

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2024年度のAWT FOCUS「大地と風と火と:アジアから想像する未来」展示風景(大倉集古館、東京)
Courtesy Art Week Tokyo
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2024年度のキッズ・ユース向けガイドツアー&ワークショップの様子
Courtesy Art Week Tokyo

今回、開催に先立って行われたプレス向けのバスツアーに参加。ギャラリーやポップアップの「AWT BAR」など、4会場を巡る機会を得た。アートディレクターの上西祐理が手がけたキーグラフィックでラッピングされた無料のシャトルバスで各会場をつなぐ「AWT BUS」は、都内に点在する会場をエリアごとに回る巡回便に加え、特別展の「AWT FOCUS」会場(大倉集古館)と東京都現代美術館など4会場をダイレクトに移動できる直行便が運行。通常、気になるアーティストや特定の展覧会を目当てに美術館へと足を運ぶ人も多いだろうが、定められたルートに沿って巡回することで興味の対象もぐっと広がる。

04AWT2025-Bus_01

実際に筆者自身もギャラリー小柳で開催中のトーマス・ルフの写真展を楽しみに参加したのだが、ミヅマアートギャラリーで観たO JUNによる実寸代のシボレーインパラを描いたドローイングに圧倒され、小山登美夫ギャラリーでは伊藤慶二の90歳とは思えぬ斬新な構図や異形のモチーフに心を揺さぶられた。

巡回便は全部で7ルートあり、例えば、青山・渋谷・新宿エリアを巡るルートFでは、柚木沙弥郎(東京オペラシティ アートギャラリー)とTWISTの名で知られるバリー・マッギー(ワタリウム美術館)の展覧会をハシゴすることも可能だ。こうした出自や表現手法、会場の雰囲気もまるで異なる展示を一度に鑑賞できるのは、新たな発見や気づきにつながるだろう。

近年、ネットにおけるアルゴリズムの進化によって、趣味嗜好や思想までもおしなべて画一化されるフィルターバブルやエコーチェンバーが問題となっている。偏った考えや価値観がより先鋭化されてタコツボ化することを危惧するものだが、フィジカルな体験でしか得られない価値を改めて再発見できたのも、バスツアーの大きな収穫であった。巡回便に関しては、途中での乗り降りも自由なので、ルートを効率的に組み合わせたアートホッピングをおすすめしたい。

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松沢一応による2025年のAWT BAR「浮かび上がる空間」。
© ichio matsuzawa office

先述したようにAWTでは、展覧会以外にも多岐にわたるプログラムやイベントが用意されている。期間中、南青山にオープンする「AWT BAR」もそのひとつだ。空間設計は建築家の松沢一応が担当。松沢氏によると、建築家の選定を担当した「AWT BAR」のアドバイザーである妹島和世から「アートではなく、建築的な空間を」という難解なリクエストを受けてデザインされた空間には、厚さ3mmの湾曲したアクリル板が設置されている。透明なアクリル板に人物や風景が映り込み、有機的な反射や透過が生まれ、複層的なレイヤーが醸成されることで、テーマである“浮かび上がる空間“を表現したのだという。

同スペースでは、AWTの各会場で作品を発表している小沢 剛、Chim↑Pom from Smappa!Group、やなぎみわとのコラボレーションカクテルや、ミシュラン三つ星レストラン「レフェルヴェソンス」のエグゼクティブシェフを務める生江史伸によるフィンガーフードを楽しむことができる。

プレスツアーでは、バケットにバターを塗ってハムを挟んだフランスの伝統的なサンドイッチ「ジャンボンブール」をベースに、日本の食材を組み合わせた「海藻のジャンボンブール」をご相伴にあずかった。スジアオノリを使った自家製の海藻バターと2種の海藻で作ったピクルスが複雑に調和した味わいはまさに絶品で、「AWT BAR」を訪れる際はぜひご賞味を。

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2025年のAWT BARで提供されるアーティストカクテル。左から、⼩沢 剛による「汎⼤陸(パンゲア)」、Chim↑Pom from Smappa!Groupによる「ゴールドエクスペリエンス」、やなぎみわによる「elevator girls」。
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2025年のAWT BARで提供される生江史伸シェフによるフード2種。左から、金のフィナンシェ、海藻のジャンボンブール。

今回、バスツアーで訪れたスポット以外にも見どころは尽きない。昨年に引き続きAWTのアンバサダーを務める俳優・鈴木京香が、トークイベントの際にイベントの目玉のひとつに挙げ、必ず訪れたいと語っていた「AWT FOUCUS」も見逃せない。現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館で開催される特別展には、世界各地から60組のアーティストが100点超の作品を出展。鑑賞以外にもギャラリーを通じて展示作品の購入が可能とあって、アートをより身近に感じられるはずだ。

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AWT FOCUS「リアルとは?」
会場外観(⼤倉集古館、東京)
Photo by Kei Okano. Courtesy Art Week Tokyo.
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AWT FOCUS「リアルとは?」(監修:アダム・シムジック)出展作品
風間サチコ《黒い花電車-僕の代》2008年
Courtesy Mujin-to Production
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AWT FOCUS「リアルとは?」(監修:アダム・シムジック)出展作品
高梨 豊〈東京人1978-1983〉より 1982年
Courtesy Taka Ishii Gallery

くしくも本イベントの記者発表が行われた日は、アメリカのトランプ大統領が来日中。会場となったオークラ東京は、アメリカ大使館が隣接することもあり、周辺の道路や施設は物々しい警備態勢が敷かれていた。パネルディスカッションに登壇したキュレーターのアダム・シムジックは、自身が監修を務める「AWT FOCUS」のテーマである “リアルとは?”について問われ、トランプ大統領の来日に触れつつ、「今、改めてリアルとは何かを考える必要がある」と切り出した。

そして、ビートルズの楽曲『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』の歌詞を引用しつつ、「明確な答えがあるわけではないが、対話を通してリアルを探ること」が大切であると説いた。また、AWT主催者である白井一成も、開会のあいさつで分断が進む社会においてアートが果たす意味を問い直すなど、昨今の社会情勢を踏まえたシビアな意見が相次いだ。

アートをはじめとする芸術表現が、社会問題や課題解決にどう寄与するのかは、これまでも幾度となく議論が繰り返されてきた。一方で、現代の日本ではアーティストや作家が社会、政治に対して声をあげることを忌避するムードも存在する。だが、創作という行為が、市井の暮らしや市民社会と地続きであることを考えれば、社会的・政治的課題に向き合うことはごく自然なことではないだろうか。

アートや芸術表現が世界を変えられるかどうかはわからない。それでも社会に横たわるさまざまな問題や困難に目を向けるきっかけにはなり得るし、鑑賞者の視点を広げ、想像力を拡張する一助になることは間違いない。そういった意味でもAWTの展覧会やプログラムは、知見を深める絶好の機会となるだけにまずは足を運んでみてほしい。

10AWT2025-記者発表会-フォトセッション_03
AWT2025アンバサダーの鈴木京香さんとゲストの磯村勇斗さん

アートウィーク東京(AWT)
会期:2025年11⽉5⽇(水)~11⽉9⽇(日)10:00〜18:00
会場:都内の参加美術館・ギャラリー、AWT FOCUS、AWT BARほか各プログラム会場

アートウィーク東京モビールプロジェクト
会期:2025年11⽉7⽇(金)〜11⽉9⽇(⽇) 10:00〜18:00

料金
※AWT BUSの乗⾞無料。
※参加ギャラリーの⼊場無料。参加美術館ではAWT会期中に限り所定の展覧会にてAWT特別割引適⽤
※AWT FOCUSの入場料(展覧会カタログ付き):一般1800円、学生・子ども無料

公式サイト
https://www.artweektokyo.com

Text:Tetsuya Sato

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