旅と暮らし

香港そのままのノリと味に盛り上がる、エンターテインメントな宴「喜記」
[状況別、相手の心をつかむサクセスレストラン Vol.06]

2018.07.26

小松宏子 小松宏子

香港そのままのノリと味に盛り上がる、エンターテインメントな宴「喜記」<br>[状況別、相手の心をつかむサクセスレストラン Vol.06]

数人で卓を囲むのに、これ以上適する料理はなく、中国料理は昔もいまも接待の王道だ。ただ、誰もがその名を知る高級中国料理や数店舗を有するチェーン店では、正直、盛り上がりに欠ける。さりとて、おまかせコースのみの高額帯の中国料理店では、いまどきの財布事情が許さない。店選びに迷っているならぜひ薦めたいのが、香港海鮮料理の店「喜記」。

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船上レストランの伝統を受け継ぐ名店

「喜記」と書いてヘイゲイと読むその店は、香港のビクトリア港のタイフーンシェルター=避風塘(台風などのときに船を避難させる場所)に停泊している船の上で供されていた避風塘料理の名店。超人気店になり、後年、陸上に店を構えたというストーリーがあり、現在香港で3店、中国大陸で6店舗を構える勢いだ超人気店なのである。昨年10月に、満を持してオーナーの夢であった日本への出店がかなった。

場所は銀座コリドー街近くの便利な立地のビルの2階。席数32と決して大きくはない店内だが清潔感があり、半個室やベンチシートの丸テーブルは数人での会食にちょうどいい。船上レストランであったころの写真が飾られていたり、紹興酒の甕(かめ)があったりと、香港好きなら盛り上がること間違いない。

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日本にはないメニューもたくさん

メニューを開くと、日本ではあまり見かけないが、そういえば香港では見た気がする、そんな魚介の料理がずらりと並び、目移りするほどだ。でもそこは接待、メニュー選びに不必要な時間をかけるべきではない。季節のコース料理がいいだろう。夏季限定スペシャル海鮮コース8800円なら間違いない。

一品目はえもいわれぬ旨みを醸す「車海老の湯引き」。酔っ払い蟹のごとく、生きた車海老を紹興酒に漬け、旨みを含んだところでさっと蒸した料理だ。実はこれ、通常のメニューにはない特別メニュー。予約に合わせて、ごく鮮度のいい車エビを仕入れ、前日から紹興酒に漬け込まなければできない料理だから。頭をはずすと味噌があふれ、あわてて口を近づけてチューッと吸い、殻をむいた指をなめる。特別に用意してもらった料理なんですよと言えば、接待の場が盛り上がること間違いない。

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とっておきの甕出し紹興酒を楽しむ

香港に負けずに蒸し暑い東京の夏、はじめの乾杯には冷えたビールしかない。しかし、中国料理好きであるなら、いや、酒好きなら、早々と旨い紹興酒に移りたいはずだ。これがまた、中国料理店を訪れる楽しみのひとつと言っても間違いない。「喜記」では、5年熟成の甕がドンと、店の片隅に置かれている。このタイミングで「とっておきの甕出し紹興酒があるんですよ」とすすめれば、相手は相好を崩すに違いない。次の「ホタテと冬瓜のニンニク蒸し」は、にんにくを利かせたパンチのある味で、まろやかで芳醇な紹興酒に合わせるにはもってこいだ。続く白身魚とオクラのさっぱり炒めも、広東料理ならではの素材を生かした味わいで、食欲の落ちがちな夏でもするりとのどを通るおいしさだ。使用する魚のハタは、中国では最も高級とされる白身魚だ。身の柔らかさと旨みの豊かさは代わるものがない。

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目玉料理のロブスターで驚かす

アサリの豆鼓ソース炒め、夏野菜とイカのXO醤炒めと、刺激のある濃厚な味へとコースが進んでいき、シェフ自らがおもむろにロブスターを持って現れると、いよいよメインディッシュの登場だ。「喜記」の代名詞でもある、チリガーリック炒めを、ロブスターで作るという、ぜいたくな締めくくりというわけだ。

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事前にコースを予約しておけば、鮮度抜群のロブスターを仕入れておいてくれるので、調理前に、生きたロブスターを見せてくれるというわけだ。鮮度抜群の素材を実査に見てからの調理であれば、食卓に運ばれてきたときの感激もひとしおだ。殻ごとブツ切りにしたロブスターを豪快に炒め、ガーリックスパイスをたっぷり絡ませたそれは、すでにかなりおなかは満ち足りているのに、わき目もふらずにかぶりついてしまう、そんな強烈な引力を持つ味なのだ。ガーリックスパイスのおいしさに、サービススタッフがちょこっとご飯を持ってきてかけてくれると、それもたまらない。

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おみやげを用意すれば、さらに高感度もアップ

締めは、麺が独特の香港スタイルの焼きそば。杏仁豆腐など、季節のデザートを楽しんで、いよいよ宴もお開き。すっかり参加者が満足したところで、さきほどのガーリックスパイスをおみやげとして渡す。そう、あのやみつきになるスパイスは「喜記」の特製品として、商品化されているのだ。家で炒め物にまぶすだけ、いや、炊き立てご飯にかけて、醤油をちょっと落とすだけで抜群。おいしかったあの味の片鱗が家でも楽しめるという、なんとも気の利いたおみやげは、接待の余韻をいい具合に残してくれるに違いない。

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Photograph : Makiko Doi

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