特別インタビュー
キーホルダーは、自分に似合わないものを。
[渋谷直角 男が憧れる、男の持ち物。]
2021.01.13
多才でいてファッションフリーク、渋谷直角の愛用品からそのセンスを探ってみる──。
キーホルダーは好きで、ついつい買っちゃうし、気づけばどんどん増えてしまいがちです。とはいえ、そのまま何かに使用することはなく、ただ家に置きっぱなし、みたいな。実際、ゆる〜い絵のコアラだとか、ゲームボーイの形をしているとか、チャーハンの写真がプリントされているとか変なキーホルダーばかりですから、あまり「使う」という発想で買ってなくて。
でも、ラグジュアリーなブランドのキーホルダーだと、ちゃんと「使おう」と思って買うから、機能としては同じなのに不思議なものですね。ブランド名がドーンと書かれているものより、写真のように抽象的なデザインのものは、家のキーなどに付けていても気分がよくて好きなのです。
いつもカバンの中などに入れて、誰かにしょっちゅう見せるものではないぶん、冒険もできますよね。自分的には少しカッコつけすぎかな? くらいのモノを選ぶのが、持っていて楽しいし、買うときも小さな刺激が得られる。
「キャラ的に似合わないよ」と言われるくらいが、実はちょうどいいキーホルダーなのかもしれません。それを長年使っているうちになじんできて、自分の魅力にプラスされるような気がするんです。
古い付き合いの友人が、20代のころによくキーホルダーをジーンズに付けていたのですが、そのキーホルダーは友人の趣味とは違うテイストのもので意外に思い「こんなの付けるんだ」と記憶に残っていたのです。それが、昨年会ったとき、友人がまだ同じモノを付けているのに気づいてビックリ&感動してしまって。もうボロボロだし、年月が経ちすぎて変色もしている。汚いだけなんですけど、40代になって服やバッグはアップデートされているのに、そのボロボロのキーホルダーだけは当時のまま、というのがすごく人として奥深く、カッコよく見えたんですよね。あれが理想のキーホルダーとの関係だと思うのです。
Photograph: Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Masahiro Tochigi(QUILT)