週末の過ごし方

一杯のコーヒーから始まる新しいコミュニケーション。

2022.04.18

ファッションエディターの審美眼にかなった、いま旬アイテムや知られざる名品をお届け。

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ミルからドリップまで、「カフェ・バッハ」の技術を見事に再現した『CM-D457B』。燕三条のメーカーならではのこだわりが詰まった道具。¥43,070/ツインバード(ツインバード工業お客様サービス係 0120-337-455

チェーン店しかない郊外の街で、東京のサブカルチャーに憧れて育った僕にとって、マンガやドラマに登場する「喫茶店での打ち合わせ」というシーンは、夢のまた夢だった。編集者になって初めて高円寺の喫茶店で打ち合わせしたときの感動は、煮詰まったコーヒーの味やタバコの煙の匂いも含めて、いまでも克明に思い出せる。そんな原体験のおかげで、打ち合わせは断然喫茶店派。拠点を持たないフリーエディターになってからは、一日4~5軒はしごすることも当たり前だった。

しかし2020年以降、そんな日常はすっかり変わってしまった。PC画面を通した打ち合わせが常識になって、「ちょっとお茶でも」なんて誘うのも憚(はばか)られる時代に。確かに時間の節約にはなるし、困ることもないけれど、打ち合わせの直前に慌ててヘロヘロのTシャツの上にジャケットをはおるなんてのは、僕の憧れた編集者像とは正反対なんだ。

そんな状況をちょっとでも変えるべく、昨年事務所を構えることにした。神楽坂の古い商店を改装したものだが、遠目にはまるで喫茶店のように見えるらしく、間違えて入ってくる近隣住民もちらほら。あえてここで打ち合わせしたいと足を運んでくれる方も増えたし、いいコミュニケーションができている。いっそのこと、さらなる喫茶店化を進めようというわけで、たどり着いたのがツインバードの全自動コーヒーメーカー『CM-D457B』。台東区日本堤にある喫茶店「カフェ・バッハ」の店主、田口 護さんが監修したもので、〝全自動〟とはいえ、日本の職人技術によって同店の技術を再構築したこだわりの道具だ。僕はこちらの空間とコーヒーが大好きで、よく豆も購入している。さすがに打ち合わせで日本堤まで来てもらうのは難しいけれど、僕の事務所で少しでもその雰囲気を味わってもらえると、とてもうれしい。一杯のコーヒーは、年々世知辛(せちがら)くなりつつあるこの世の中に対抗する、ひとつの手段だと思うのだ。

山下英介(やました・えいすけ)
ライター・編集者。1976年生まれ。『LEON』や『MEN'S EX』などの編集や、『MEN’S Precious』のクリエイティブ・ディレクターに従事した後、独立。趣味はカメラと海外旅行。

<<<フレンチトラッドと英国製ローファーの関係。 はこちら

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「アエラスタイルマガジンVOL.52 SPRING / SUMMER 2022」より転載

Photograph: Fumito Shibasaki(DONNA)
Styling: Eiji Ishikawa (TABLE ROCK.STUDIO)

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