紳士の雑学

個人が社会の主役になる、その一歩目を支援したい
BASE株式会社 鶴岡裕太代表取締役インタビュー[前編]

2019.05.22

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必要なものはメルアド、パスワード、3文字以上のショップURLのみ。「お母さんも使える」をコンセプトに今年2月、70万ショップを突破したEコマースプラットフォーム「BASE」。2012年、大学生のときにBASE株式会社を設立した鶴岡裕太代表取締役は語る。「インターネットの力で普及していくものはグローバルか、ローカルか。BASEが対象にしているのは完全に後者です。やがては個人だったり、地方にある小さなお店が主役になるような社会が来る。彼らの一歩目を支援する、それがBASEの役割だと思っています」

初期費用なし。月額利用料なし。商品登録数も無制限。無料のネットショップ開設は当時、画期的だった。その1年後、ヤフーが同様の無料サービスを始めた。「当時はビビりました」と笑うが、利用者層が異なるため影響はなかった。先の言葉ではないが、鶴岡率いる小さなチームが業界を動かしたわけだ。BASEのサービスが市場に受け入れられた理由をこうも語る。「基本的には運とタイミング。価値観が多様化し、より高い給料を追求するような資本主義的な考え方ばかりではなくなりました。『給料は安くても楽しく働きたい』とか『生きがいを求めたい』という人が増えたんですね。そういう時代にちょうど合致したのかなと思います」

昨秋4度目の移転をし、六本木グランドタワーにオフィスを構えた。会社の道程を鶴岡とともに振り返ってみたい。

サービス初日に数千人が登録

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BASE前夜。大学3年生だった鶴岡は、家入一真氏率いるクラウドファンディングの会社、CAMPFIREでインターンをしていた。プログラミングを覚え、ウェブサービス作成を手伝い、好きだったネットの世界にさらにのめり込んだが、起業しようと考えたことはなかった。「大学卒業後はこのまま働かせてもらうか(笑)、そうでなければウェブ関連の仕事に携われたらいいかな、くらいの感じでしたね」

あるとき、地元の大分で小売店を営む母から相談を受けた。「ネットショップを立ち上げたいんだけど」と。楽天などに出店する方法もあったが、ネットの知識がないとややこしい。お金も知識も技術もいらない、誰でもショップが作れるネットサービスができないかと考えた。

「親孝行というより、母のような地方の50~60歳くらいの女性も『ネットで売りたい』って考えるような時代が来たんだな、と。一方で、実際の需要と供給のギャップみたいなものを感じましたね。楽天やYahoo!を使うような大きな会社ばかりでなく、ローカルの小さなチームを対象にする、そんなサービスがあったらいいなって」

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使命感もあったが、それ以上にウェブサービスを考えるのが楽しかった。仲間数人に手伝ってもらいながら2012年11月にBASEをリリース。メディアに紹介されたこともあり、初日に数千人のユーザーが登録し、ひと月後には1万を超えた。自分の作ったサービスを喜んでくれる人がいる。そのことが単純にうれしかった。しかし、同時に業務が増え、てんやわんやの時期でもあった。

「予想外でしたからね。僕自身、当時はプロのエンジニアとは言えないレベル。趣味の延長線のようなプログラミングでしたのでトラブルもいろいろありました。想定していたトラフィックと違い、商品登録がうまくできないとか、同時に2つの商品が売れてしまうとか。人数も少なかったですし、いま振り返っても数年間は大変でしたね」

登録数は右肩上がり、けれど収益はゼロ

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ローンチの1カ月後にはBASEを法人化した。1年目には5万ショップまで登録数を伸ばした。ITベンチャー企業として他がうらやむスタートだが、その実、BASE事業からの収益はゼロだった。多くの人に使ってもらうことを最優先としたため、数年間はあえてマネタイズしない選択を取ったからだ。

「当時は売れたときの決済手数料のみ。これはカード会社等にお支払いするものでしたから、会社には利益は残りません。一方で、収益化を狙うとそれぞれショップの売り上げの構造も考える必要がありますし、僕たちが対象とするユーザーさん向けではなくなる可能性がある。『誰のため、何のためにやるのか?』がいちばんブレてはいけない、と思ったんです。『これからお店をスタートする』というとき、1円でも取られてしまったら、スタートする側にとってはリスクになると考えたんです」

その間の資金運営はどうしていたのか? 鶴岡に賛同する投資家に恵まれたことも幸運のひとつだったろう。サイバーエージェントはじめ幾つかの出資があり、運営費や社員の給料などはそこからまかなうことができた。

収益化を始めたのは40万ショップを超えた2017年秋から。商品が売れたときのみサービス利用料が発生する仕組みへと変更した。マネタイズのタイミングは難しかったものの、ユーザーはそれ以上の価値を見いだし、BASEの登録数はさらに伸びていった。

後編へつづく>>

プロフィル
鶴岡裕太 BASE株式会社代表取締役CEO
1989年生まれ。大分県出身。東京工科大学3年生のとき、家入一真氏率いるハイパーインターネッツ(現CAMPFIRE)でのインターンを経て2012年12月、BASE株式会社を設立。16年にForbes が選ぶ「アジアを代表する30歳未満」の小売り&Eコマース部門、18年にはForbes JAPANの日本の起業家BEST3位に選出された。

Photograph:Kentaro Kase
Text:Mariko Terashima

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