旅と暮らし

オレゴンの大自然でラグジュアリーを堪能する
日本人がまだ知らないアメリカ/前編 トゥアラティンバレー

2018.11.09

オレゴンの大自然でラグジュアリーを堪能する<br>日本人がまだ知らないアメリカ/前編 トゥアラティンバレー

アメリカ西海岸に位置するオレゴン州。「全米でもっとも住みたい街」に選ばれたポートランドがあるこの地域は、西側は海、東側は雄大な山々があり、全域を通して森林や農場など大自然に恵まれた場所だ。多くの観光客を魅了してやまないオレゴン州には、日本人がまだ知らない魅力が数多く隠されている。

世界有数のワイン産地「トゥアラティンバレー」

言い慣れないと舌を噛んでしまいそうな地名「トゥアラティンバレー(Tualatin Valley)」。最初に紹介するここはポートランドの西側に位置し、車ならダウンタウンから約10分、ポートランド国際空港からは約30分の場所にある。全米第3位のワイン生産地で、オレゴン州最大のふどう栽培地域のウィラメットバレーの最北端にあり、30以上のワイナリーを有する。要するに、世界的においしいと称されるワインを味わうのにうってつけ、というわけだ。

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ぶどう畑の中に建つ、モダンな「ポンジー・ヴィンヤーズ」

まず必ず訪れたいのが「ポンジー・ヴィンヤーズ(PONZI vineyards)」。オレゴン州最大級のワイナリーのひとつで、広大な敷地にはレストランとテラス席に加え、庭にプレースペース、ぶどう畑に蒸留所まである。この場で収穫し造られたワインを、ぶどう畑を眺めながら味わえるというなんともぜいたくな場所。あたりを見渡せば、心地良い日差しを浴びながらワイン片手に会話を楽しむ大人たち。都会の喧騒とはうって変わりゆったりとした時間が流れている。

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創業者のポンジー夫妻は1970年代に、アメリカ政府承認の良質なぶどう栽培地域であるローレルウッド土壌のイチゴ畑に1本の枝を植えたのが、ぶどう栽培の始まり。2012年に娘姉妹が経営を引き継ぎ、翌年『The Wall Street Journal』に取り上げられ、2015 年にアメリカのワイン雑誌『Wine Enthusiast』による評価で、ポンジーのシャルドネが「Best of the year」を獲得。アメリカ国内での注目が高まるなか、2018年『TEXSOM International Wine Awards』にて金賞を受賞するなど、世界有数のワイナリーとなった。

ちなみにオレゴンワインといえばピノ・ノワールが有名なのだが、シャルドネやピノグリ、リースリングの生産もされている。いずれもぜひ味わってもらいたい逸品だ。

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山腹の斜面に建てられた醸造所では、プレス工程を機械に頼ることなく重力を利用したワイン造りが実践されており、醸造所の中を一般客も見学することができる。施設の見学と試飲がセットになったツアー(USD$40/1名)や、食事とワインのペアリングが楽しめるフード&ワインペアリングランチ(USD$125/1名)などの館内ツアーがあるので、実際に見て楽しんでもらいたい。

そのあとトゥアラティンバレーの空気を感じながら飲むエレガントな味わいのワインは、忘れられない味になるだろう。

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ウィラメットバレーに所有する11のぶどう畑では、数種類のぶどうが栽培されている

川を挟んだ西側には「ラプター・リッジ・ワイナリー(Raptor Ridge Winery)」もある。元インテルの社員だったオーナーが退職後に独学でワイン造りを学んでオープンさせたワイナリーで、歴史が浅いが実力派。オレゴン州のぶどう畑を多数保有しているので、各地域のワインの飲み比べをしても良いだろう。ちなみに、各界の大物や著名人たちもラプターのワインを求めて足繁く通っている。

旅の醍醐味、ローカル散策

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「リッジウォーカー・ブリュワリー・カンパニー」の店内

せっかく旅をするならこの場所でしか楽しめないことをしたいもの。地元の同級生たちが元教会を改装して作ったレストラン「リッジウォーカー・ブリュワリー・カンパニー(Ridgewalker Brewing Company)」には、彼らが造った地ビールを含めて随時30種前後のビールがそろっている。ランチやディナーもできるが、ししとう&ペッパーや、揚げピクルスなど、つまみ系も美味。

このブリュワリーのあるフォレスト・グローブは学生の町としても有名で、夏~秋にかけての週末には、町中でファーマーズマーケットや地元のお祭りも随時開催されている。

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    路上に絵を描く「サイドウォーク・チョーク・アート・フェスティバル」はフォレストブローブの夏の風物詩
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    18種の酒とインポートの酒を扱う「桃川 さけ・ワン」。日本にはない珍しいフレーバーはクセになる
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    「おやつパン・ベーカリー」人気1位はカレーパン、続いてあんパン、食パン。特製マーマレードジャムも絶品
  • farnhill2
    ワシやタカの他にも珍しい渡り鳥や水鳥、ビーバー、カワウソなどさまざまな野生動物のいるファーンヒル湿地帯
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    全長約33キロ以上あるトレイルコース「バンクス・ヴェロニア・ステイト・トレイル」。自転車を借りてひと汗かくのも◎

他にもフォレスト・グローブには、アメリカで最初にオープンした酒蔵「桃川 さけ・ワン(SAKE ONE)」があり、カリフォルニアやアーカンソーで穫れた山田錦を用いた日本酒を扱っていたり、日本庭園デザイナーの栗栖宝一氏によって壮大なアートに生まれ変わった生活排水浄水場の「ファーンヒル湿地帯」があるなど、日本との関わりも深い。

また、ナイキの本社があるビバートンの町では、元製パン会社に勤めていた堀江ヒロ氏が2016年にオープンさせた「おやつパン・ベーカリー(OYATSUPAN bakers)」もある。日本でおなじみのおやつパンや惣菜パンは、地元の人々に人気なのだ。

オレゴン流、アグリエンターテイメント

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リー・ファームのディナー会場

魅力にあふれたオレゴン州トゥアラティンバレーの締めは、一生の思い出に残るディナーとしよう。地元農家が生産した新鮮な食材を使って、地元のシェフが腕を振るう食事は、極上のひとときになる。それを体験できるのが「リー・ファーム(Lee Farms)」だ。

かぼちゃやはちみつなどを販売する店内を通ったその先に、広い農場とともに不意に現れるディナー会場。例えるなら“大人の集うクラシカルな隠れ家レストラン”と言えるそこは、なんと普段はトラクターの保管場所にもなっている倉庫だという。

中はシンプルで丁寧なテーブルセッティングがされており、前菜からメイン、デザートのフルコースで提供される。天候や食材によって、前日にメニューが決まるというそれらの料理はあまりにも新鮮! あきらかに元気な食材だとわかる。

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今回のディナーはイベント会社「フィールド・アンド・ヴァイン・イベンツ社(Field and Vine Events)」主催のもと開催されたので、同じ内容がいつでも体験できるわけではないのだが、リー・ファームでは年間通してアグリエンターテイメント(=アグリカルチャー・エンターテイメント/農業で人々を楽しませる)を提供している。訪れる際は事前のチェックを忘れずに。

テーブルで隣り合った人々と大皿料理を取り分けたり、ワインを注ぎ合うなど、おいしい時間をシェアできるのはかけがえのない時間だ。すぐそこで収穫したばかりの食材を、すぐに調理しおいしく食べられるなんて、これ以上のぜいたくがあるだろうか。しかもその場所が農場というギャップ! まさにオレゴンでしか堪能できない、新しいラグジュアリーな体験だ。

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後編へつづく

問/ポンジー・ヴィンヤーズ19500 SW Mountain Home Rd, Sherwood(+1 503-628-1227)、ラプター・リッジ・ワイナリー18700 SW Hillsboro Hwy, Newberg+1 503-628-8463)、リッジウォーカー・ブリュワリー・カンパニー1921 21st Ave, Forest Grove+1 503-747-0271)、おやつパン・ベーカリー16025 SW Regatta Ln, Beaverton+1 503-941-5251)、桃川 さけ・ワン820 Elm St, Forest Grove+1 503-357-7056)、リー・ファーム21975 SW 65th Ave, Tualatin+1 503-63801869)、ファーマーズマーケットサイドウォーク・チョーク・アート・フェスティバルファーンヒル湿地帯ヴェロニア・ステイト・トレイル

取材協力:トゥアラティンバレー・ワシントン郡観光局デルタ航空

Text & Photograph : AERA STYLE MAGAZINE

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