旅と暮らし

パリ最古にして最高峰のホテルを訪れるべき、5つのステキな理由

2018.02.22

大石智子 大石智子

パリ最古にして最高峰のホテルを訪れるべき、5つのステキな理由

Le Meurice(ル・ムーリス)
フランス/パリ

歴史ある街の老舗ホテル。これは私にとって、旅をするうえで最も惹(ひ)かれる条件のひとつ。パリの「ル・ムーリス」は、その理想形ともいえるストーリーにあふれるホテルだ。

ホテルの歴史は、約250年前の1771年にさかのぼる(ちなみにそのころ日本は江戸時代で、『鬼平犯科帳』の時代背景に近い)。「ル・ムーリス」の前身は、カレーという港町でフランス版旅籠(はたご)として郵便局長のシャルル・A・ムーリスが始めた宿だった。常客はパリに向かうイギリスの上流階級の人々。ラグジュアリーの流れはこのころから始まっていたのだ。

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カレーからパリまでは36時間ほどかかる。そのため、1817年に旅の疲れを癒やす宿として、パリに「ル・ムーリス」をオープンさせた。その後、イギリスのヴィクトリア女王からインドのマハラジャ、スペイン王夫妻、ナポレオン3世までが泊まり、“王族のホテル”として名声を高めていった。また、チャイコフスキー、ココ・シャネル、パブロ・ピカソ、サルヴァドール・ダリなど、歴史に名を残すアーティストが愛した宿でもあった。なんという客層!

特に強烈なエピソードを残したのはサルヴァドール・ダリだった。ダリは30年間、毎年1カ月もこのホテルに滞在。スペイン国王も泊まったスイートルームをアトリエにし、山猫を飼い、羊の群れや馬をも部屋に連れ込んだ! 奇天烈すぎる。ホテルのスタッフは「まいったなあ」となったはずだけれど、それでも才能あふれるダリという人間に魅了されていたとか。

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そんな映画のようなホテルは、いま、5つ星ホテルのさらに上を意味する“パラス”の称号を獲得。パリを象徴するホテルとして、世界中の人々を魅了している。#Le Meuriceと投稿されるSNSの写真は、どれも美しく、生き生ききとしているのだった。

以上の予備知識を得てからどうしても気になり、昨年の11月に1泊だけ泊まった。宿泊した以外の日も含め、3度バーに行き、2度ケーキを食べた。それもあって1泊以上しているような気もしていて、なじみ深い。いちばんの理由としては、“王族のホテル”と呼ばれた場所は、どんな人をも受け入れる包容力と安らぎがあったからだと思う。以下、「ル・ムーリス」に泊まるメリットを5つ紹介していく。

1.パリ随一のロケーションに立っている

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ロケーションはチュイルリー公園目の前の、リヴォリ通り沿いという一等地。ルーブル美術館を見下ろし、オルセー美術館へも徒歩圏内で、セーヌ川沿いを散歩するのもパリ気分を盛り上げた。とても長いファザードをもつ通り沿いにあり、雨に濡れずにすむのもありがたい。また、そのファザードが美しく、宮殿の廊下を歩いているような気分になるのだ。そして、部屋の窓を開けて右手側にはエッフェル塔が!! 昼も夜も、この眺めがいちばんのご褒美だった。

2.世界No.1パティシエ(イケメン)がいる

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3カ月たったいまも、「ル・ムーリス」で食べたレモンケーキとミルフィーユの味と食感をしっかりと覚えている。そのケーキを作ったのは、いま世界で最も人気のあるパティシエ、セドリック・グロレ氏。インスタグラムのフォロワーはなんと80万人! 昨年は「グラン・ターブル・デュ・モンド」主催のレストランアワードにて世界ベストパティシエ賞も受賞し、才能が爆発している。

本物のレモンにそっくりなケーキは、食べた瞬間に青空と太陽を感じるようなフレッシュさ。もぎたてのレモンのごとくみずみずしく、魔法にかけられたような体験に驚いた。ミルフィーユはパイがとてつもなく儚(はかな)く、舌で押しただけでシャリリと崩れるほど。食べ終わったあとに、「もう一度あの食感を味わいたい」と欲が止まらなくなる逸品だ。このふたつを食べに行くためだけでも、「ル・ムーリス」をまた訪れたい。

3.クラシックなバーが最高

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    Meurice Millenium
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カウンター席もソファ席も、どこに座っても落ち着くバーだった。3回行き、いずれも1杯だけ。衝撃だったのが、隣の人を真似て頼んだペピーノモヒート。フランスの生姜が入ったそのモヒートは、しっかり濃く、辛く、甘い。「酒のシャバシャバは許されない」といった気概に感動したのだった。

ほか、“Juanito”というベリーのカクテルと、“Meurice Millenium”(写真)というバラの香りのするカクテルをいただいた。毎回、紳士なスタッフが温かく迎えてくれ、自分がちょっといい大人だと思わせてくれた。高さのあるカーテンのたっぷりとしたドレープもステキだ。このバーでも前述のケーキを食べられるのもうれしいポイント。

4.優雅な空間に酔いしれられる

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200年余の歴史をもつ建物は、ここを行き交ったさまざまな人の流れを感じるような、不思議な魅力にあふれている。きっと運気がいい場所なのではないだろうか、と思ってしまう。建築としては1769年に造られた宮殿がベース。回転ドアをくぐれば、その瞬間から優雅な空間に包まれる。特に、「レストラン ル・ムーリス アラン・デュカス」(冒頭写真)の絢爛さには圧倒された。あんなに豪華な場所で朝ごはんを食べることは、そうそう体験できない。

部屋に戻ると、何げなく置いてあるりんごまでやたらと美しく見えた。気持ちいい光が入るおかげだろうか。チャーミングさと品を兼ね備えた部屋だった。

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「レストラン ル・ダリ」は名前のとおり常連だったダリが由来で、デザインを担当したのは、モダン建築デザインの巨匠であるフィリップ・スタルクとその娘のアラ・スタルク。注目はアラが描いた天井画。実はこれ一枚の巨大な布に絵を描きつるしたもので、エレガントにして動きだしそうな躍動感がある。角に置かれた大きな鏡がユニークな内装を映し、空間の魅力を倍増させている。

5.フレンドリーかつ迅速なサービスがある

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スタッフ同士の雰囲気がよく、ホテル全体に一体感があった。ここで働く人はみんな、「ル・ムーリス」のことが好きで、歴史あるホテルに誇りをもっているのだと思う。そんな共通意識があるから、チームワークがいいじゃないだろうか。その意識は「ホテルを楽しんでほしい」「パリを満喫してほしい」という思いにつながり、パーソナルなホスピタリティーを生む。また、ここには日本人の敏腕コンシェルジュ・木村大介さんがいるので安心だ。

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今回は5つだけポイントを挙げたけれど、“深夜にルームサービスで頼んだオニオングラタンスープがおいしかった”とか、うれしい瞬間は多々あった。パリに疎い私だったけれど、「ル・ムーリス」はパリのことが好きになるホテル。パリに行くことがあれば、ぜひケーキを食べにだけでも立ち寄っていただきたい。

Le Meurice

日本での問い合わせ
ドーチェスター・コレクション予約センター 0120-914-084

プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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