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スーツのスラックスの裾上げはシングルとダブル、どちらがいい?
長さの目安とともに解説

2020.11.24

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スーツのスラックスを裾上げするときは、基本的にシングルまたはダブルのどちらかを選ぶことになります。両者の特徴を押さえておけば、自分に合った裾の仕様を選ぶことができるでしょう。

この記事では、裾上げのシングルとダブルの違いや、裾上げの長さの目安について解説します。自分で裾上げをする方法についても詳しく紹介するので、参考にしてください。

裾上げの「シングル」と「ダブル」の違い

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スラックスの裾を折り返さない仕上げ方を「シングル」、折り返す仕上げ方を「ダブル」と言います。この呼び方は和製英語で、正式な英語では、シングルが「plain bottoms」、ダブルが「cuffed bottoms」または「turn up」です。シルエットがすっきりしているシングルには、軽やかでスタイリッシュなイメージがあります。一方、ダブルの裾上げには重厚感があり、クラシックな印象を与えます。

一般的なスラックスの裾というと、ダブルよりもシングルをイメージする方が多いのではないでしょうか。日本では、ビジネススーツの裾上げはシングルが主流となっています。しかし、シングルでなければいけないという決まりがあるわけではなく、好みに応じてダブルを選んでも問題はありません。実際、欧米では多くのビジネスマンがダブルでスラックスを裾上げしています。

スーツの歴史を振り返ると、もともとスラックスの裾はシングルのみでした。ダブルの裾上げが生まれた経緯には諸説ありますが、19世紀末に英国貴族が雨や泥で汚れないように裾を折り曲げたことから生まれたとする説が有力です。基本的に、裾を折り曲げて汚れを防ぐというのは屋外のみで必要な工夫です。つまり、ダブルの裾上げは屋外で活動するカジュアルなシーンに適した仕様であり、シングルよりもカジュアル度が高いのです。

ダブルの裾上げが生まれた背景からも推察できることですが、フォーマルスーツはシングルで裾上げされています。なお、タキシードや燕尾服などのスラックスには側章が付いており、そのことがシングル仕様にせざるを得ない理由ともなっています。

側章とは、スラックスの両側面に付けられたシルク素材のテープのことです。フォーマルスーツのスラックスにはこの側章が付けられているため、裾をきれいに折り返すことができません。こうした事情もあり、シングルがフォーマルでダブルがカジュアルというイメージが現在では定着しています。

ちなみに、側章の起源は18世紀末ごろにナポレオンが軍服のパンツの側面にテープを付け、兵士の所属を区別したことにあると言われています。また、かつてはズボンの脇の縫い目を見せるのはマナー違反とされており、側章には縫い目を隠すという役割もありました。この側章は燕尾服では2本、タキシードでは1本付けるのが正式だとされていますが、これは日本特有の習慣です。実際には、燕尾服の側章は2本ではなく、太いものを1本付けるだけで構いません。

スラックスをシングルで裾上げするメリットとしては、脚が長く見えるということが挙げられます。また、あらゆるシーンで通用するシングルスーツとの相性が良く、合わせれば全体のシルエットがスマートにまとまります。そして、日本のビジネスシーンでは多くの人がシングルで裾上げしているため、シングルを選んでおくのが無難だという事情もあるでしょう。

先述のとおり、ダブルの裾上げにはカジュアルな印象があり、フォーマルなシーンにはシングル仕様が適しています。ダークスーツをシングルで裾上げしておけば、結婚式などのフォーマルシーンでも着用できるでしょう。

一方、ダブルでの裾上げにはクラシカルな雰囲気を強調できるというメリットがあります。フロントボタンが2列に並んだダブルスーツや、ベストを加えたスリーピーススーツなど、近年は英国調のスタイルが人気を集めています。これらの英国調スタイルは概して厳格な空気が漂うため、重厚感のあるダブル仕様が適しているでしょう。プレーントゥやストレートチップなどの格式が高い革靴に合わせると、全体の雰囲気はさらに引き締まります。

ダブルの折り返し部分を「かぶら」といいますが、かぶらはホックまたは糸で留めることになります。ホックで留める場合、かぶらの内側にたまった汚れを取り除くのは簡単ですが、上からのぞいたときにホックが見えて不格好な印象を与えます。裾をスマートに見せたい方は、かぶらを糸で縫い付ける仕立て方のほうが良いでしょう。

ちなみに、シングルとダブル以外に「モーニングカット」という裾上げもあります。モーニングカットとは、裾の前方を短く、後方を長くする仕上げ方のことです。モーニングカットで仕上げれば、スラックスの裾が靴の甲に乗ってたるむことがないので、美しいシルエットを保つことができます。昼間の正礼装であるモーニングコートのコールパンツがこの方法で裾上げされることが呼び名の由来です。シングルよりもフォーマル度の高い仕様ですが、ビジネススーツに採用される場合もあります。

スラックスを裾上げするときの長さの目安

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スーツはサイズ感が命なので、スラックスの裾も長さにこだわって仕上げることが重要です。ここでは、スラックスを裾上げするときの長さの目安や、長さを決める際のポイントについて解説します。

正しい方法で計測する

スラックスのフィッティングでは、ウエストの高さを正確に合わせる必要があります。普段はくときの位置からずれていると、裾の長さが合わないままはきつづけることになるので注意しましょう。スラックスのウエストは腰骨の位置に合わせ、ベルトも忘れずに着けてください。

革靴を履かない状態における長さの目安は、くるぶしが隠れる程度だと短めです。裾が床から指1本ほどの高さにある状態が標準で、かかとが隠れる程度だと長めになります。靴を履いて合わせるときは、普段からよく履いているものを選ぶようにしましょう。靴によって高さが変わってくるため、あまり履かない靴で合わせると、普段の裾の長さに違和感が生じる場合があります。計測するときは背筋を真っすぐ伸ばし、正面を見据えた状態を維持してください。腰を曲げるなどして姿勢を崩すと、裾の長さも狂うことになります。

シングルはノーブレイク、ダブルはワンブレイクが適切

一般的に、仕上げをシングルにするか、それともダブルにするかによって適切な裾の長さは異なります。シングルの場合、スタイリッシュなシルエットを崩さないためにもノーブレイクの裾丈が望ましいとされています。ノーブレイクとは、スラックスの裾が靴甲にまったく当たらず、生地にたるみが生じない裾丈のことです。

一方、ダブルの場合は一般的な裾丈であるワンブレイクが好ましいでしょう。ワンブレイクではスラックスの裾が靴甲に当たって生地が軽くたるみます。一般的に、スラックスの裾丈は長いほどフォーマル度が高くなるとされているため、ノーブレイクよりもエレガントな印象を与えます。なお、厳密な決まりがあるわけではないので、好みに応じて長さを調節しても問題はありません。

ダブルは折り返し幅に気を付ける

ダブルで裾上げをするときのポイントは折り返し幅の太さです。ダブルの折り返し幅によってスラックスの裾は印象が大きく変わります。一般的な折り返し幅は4~4.5cmですが、背が高い人がはく場合は太めに、低い人の場合は細めにすると全体のバランスが良くなるでしょう。

折り返し幅にはトレンドがあり、太い幅がもてはやされるときもあれば、細い幅がおしゃれなときもあります。トレンドに流されすぎると着用シーンが限定されるため、基本的には4~4.5cmのオーソドックスな幅を選ぶことをおすすめします。そのうえで、自分の体形や靴との相性などを加味して長さを調整すると良いでしょう。

太いスラックスは裾丈を長めにする

裾幅が太いスラックスの場合、裾丈を長めにするのがバランスを良くするポイントです。幅が太いうえに裾丈の短いスラックスはスタイルが悪く見え、歩くたびに裾がはためいて不格好な印象を与えます。反対に、裾幅が細いスラックスの裾丈は短めがおすすめです。くるぶしが見えるほどの短さは問題外ですが、裾が靴甲に触れない程度に短くすれば足がすっきりとして見えます。細いスラックスの裾を長くしすぎると、生地が余って足元がもたついているような印象を与えるので、おすすめできません。

カジュアルシーンなら短めの裾も正解

先述のとおり、スラックスの裾丈は短いほどカジュアルな印象が強まります。カジュアルシーンで使うスラックスなら、くるぶしまでの短い裾丈に仕上げるのも良いでしょう。オフィスカジュアルなどの場面で、スーツの堅い印象を和らげるために裾丈を短くするのもひとつの方法です。普段はビジネススーツとして着用しているスラックスも、プライベートでは裾をロールアップすれば適度にカジュアルダウンできるのでおすすめです。

裾上げをする方法

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スーツのスラックスの裾上げをする方法は大きく分けて4種類あります。ここでは、それぞれの方法について紹介します。4つ目の「自分で裾上げをする」では詳しい手順も紹介するので、参考にしてください。

購入店に依頼する

スーツを購入した店でスラックスの裾上げをしてもらうのが最もオーソドックスな方法でしょう。スーツを販売しているほとんどの店では、裾上げサービスを実施しています。基本的にはスーツを購入した当日のみの受付となりますが、事情を説明すれば後日でも裾上げをしてくれる可能性があるので相談してみましょう。裾上げの料金は、無料で行ってくれるところがあれば、数百円かかるところもあります。

お直し専門店に依頼する

洋服の修理やサイズ合わせを行っているお直し専門店を利用するのもひとつの方法です。ほとんどのお直し専門店ではスラックスの裾上げを引き受けてくれます。全国チェーン店や小規模な店舗だけでなく、主婦が在宅でお直しを行っている場合もあるため、近所で利用できるところを探してみると良いでしょう。シングルやダブル、モーニングなど、希望する裾のタイプも指定できるはずです。お直し専門店での裾上げの料金相場は1000~1500円程度となります。

クリーニング店に依頼する

クリーニング店のなかには、本業とは別にオプションとして裾上げサービスを用意しているところがあります。ただクリーニングのみを依頼するよりも時間はかかりますが、ついでに裾上げを頼むのもおすすめです。クリーニング店に裾上げを依頼した場合の料金相場は1000~2000円程度です。なお、自宅への集荷・配達まで行ってくれる宅配クリーニングでも裾上げを依頼することはできます。忙しくて店舗まで出かける暇がない方は、宅配クリーニングでの裾上げを検討してみてはいかがでしょうか。

自分で裾上げをする

店に依頼する以外に、自分で裾上げをするという方法もあります。自分で裾上げをするときは、作業に取りかかる前に長さを正確に決めることが重要です。先述した裾上げの長さの目安を参考に、だらしなく見えないような長さを測ってください。実際の作業では、裾上げテープ・手縫い・布用接着剤の3種類のなかから好きな方法を選びましょう。ここからは、それぞれの手順について紹介していきます。

簡単に裾上げしたい方には、裾上げテープを利用する方法がおすすめです。スラックスの股下の長さを決めたら、それに7cmほど加えたあたりで生地を裁断してください。この余りの7cmがテープを貼る際の縫い代となります。生地を切るときは、なるべく切り口が真っすぐになるように気を付けましょう。

次に、スラックスを裏返して裾にする部分にアイロンで折り目を付けていきます。なお、スーツにアイロンをかけるときは、必ずハンカチなどの当て布を使うようにしましょう。当て布がないと、アイロンの熱で生地が傷む恐れがあります。

続いて裾上げテープを用意しますが、使用するテープの長さの目安は裾の外周+4cm程度です。4cmほど長めに切ることで、裾に巻いたときにテープ同士が重なって丈夫な仕上がりになります。このテープを水に濡らしたら軽く絞り、折り返した裾先とスラックスの生地が重なっている部分に置いてください。テープの接着面が生地に触れていることを確かめたら、当て布をしてアイロンをかけていきます。一気に接着させると生地がよれる可能性があるので、あくまでも少しずつ、テープを張りながら慎重にアイロンを当ててください。裾全体がテープで固定されたら、スラックスを裏返せば裾上げは完了です。

なお、裾上げテープには片面ではなく両面が接着されるタイプもあります。両面タイプのものを使う場合、片面タイプと同じように置くと、テープが当て布にくっついてしまいます。両面タイプは折り返した裾の内側に隠すように置き、アイロンでゆっくりと熱を加えてください。

裾上げテープを使えば誰でも簡単に作業できますが、この方法にはデメリットがあります。まず、失敗しても基本的にはやり直せないということです。裾上げテープに使われている接着剤は一旦熱で溶けると強力に固定されるため、ほとんどはがすことができません。かといってテープを無理に引きはがすと、スラックスの生地が破れる恐れがあります。また、仮にうまくはがせたとしても、はがしたテープは再び利用できません。失敗したときのために、裾上げテープは余分に用意しておくことをおすすめします。さらに、生地を貼り付けているだけの裾上げテープは時間がたつにつれて接着力が弱まっていき、自然にはがれる可能性があります。

裾上げテープで失敗するのが不安だという方は、手縫いで裾上げする方法を試すと良いでしょう。手縫いでスラックスの裾上げをするときは、まつり縫いを採用するのが一般的です。裾上げテープを使うときと同じように、まずは股下の長さを決めて裏返し、7cmほど余らせて裁断した部分を折り返しましょう。折り返した縫い代は3つ折りにし、アイロンでしっかりと折り目をつけておきます。

次に、針の穴に糸を通し、縫い代の裏から表へと糸を通します。このとき、玉結びを作っておくことを忘れないようにしてください。続いて、最初に針を刺した位置から5mmほど左にずれた位置の下生地に糸を通し、さらに2mmほど左にずれた位置に再び糸を通してください。下生地に通したこの2mmの糸が、普段はいているときに外側から見える部分になります。糸を目立たせたくない場合は、縫い幅をさらに細かく刻むか、下生地の経糸を数本すくうだけにすると良いでしょう。

下生地に糸を通したら、再び縫い代の裏から表へと針をくぐらせます。同様に5mmほど左にずれた位置の下生地に糸を通していき、同じ作業をスタート地点に戻ってくるまで繰り返してください。縫い目の始まりと終わりが合流したら、玉止めをすれば手縫い完了です。

手縫いで裾上げをする場合は、表側に少し糸が見えることになるので、スラックスと同系色の糸を使うようにしましょう。また、なるべく縫い幅が均等になるようにすると美しく仕上がります。スラックスの生地が分厚く、なかなか針が通らないときは、太めの針を使うことをおすすめします。

3つの方法のなかでも、布用接着剤を使って裾上げする方法は最も簡単です。アイロンで熱を加えなくても布と布を貼り付けることができ、裾上げだけでなくバッグの製作などにも使われています。

布用接着剤で裾上げするときは、まずほかの方法と同じように股下の長さを決めてスラックスを裏返します。次に、縫い代の部分を3つ折りにしてアイロンで折り目を付けてください。続いて、折り返した縫い代を開いて両側に布用接着剤を塗り、手でしっかりと圧着しましょう。この部分に本などの重いものを載せて24時間以上放置すれば、裾上げが完了します。

このように、手軽に裾上げができる布用接着剤ですが、利用するときはいくつかの注意点に気を付けてください。まず、接着させる生地が薄い場合、接着剤が裏側までにじんでシミになる可能性があります。スラックスにシミができないか不安な方は、はかなくなったスラックスで試してみると良いでしょう。また、接着させた部分は固くなるので、生地がやわらかいスラックスに使うと違和感が生じるかもしれません。そのほか、裾上げしたスラックスを洗濯機で洗ったときに接着剤が溶け、一緒に洗っていた衣類に付着するケースもあるようです。便利な布用接着剤にはリスクもあるので、高価なスーツの裾上げには使用しないのが賢明です。

自分で裾上げする方法を3種類紹介しましたが、裾上げテープや布用接着剤を使う方法はスラックスの生地を傷める可能性があります。このことを考慮すると、ほかの方法よりも手間はかかるものの、手縫いで裾上げをするのが最も安全な方法だといえるでしょう。裾上げが済んでいないスラックスが手元にある方は、針と糸を用意して手縫いに挑戦してみることをおすすめします。一度裾上げの技術を身に付ければ、それ以降は専門店に裾上げを依頼する必要もなくなるでしょう。

まとめ

ビジネススーツにおいて、裾上げをシングルかダブルにしなければならないという決まりはありません。自分の好みに合わせて、好きなほうを選ぶと良いでしょう。シングルの裾上げはすっきりとした印象があり、フォーマルなシーンにも対応できます。威厳のあるクラシカルな雰囲気を演出したいときは、ダブルの裾上げがおすすめです。

裾上げの長さは、シングルならノーブレイク、ダブルならワンブレイクが目安となります。ただし、適切な長さは裾幅の太さによっても変わってくるため、鏡を見ながら調整するのが賢明です。店で裾上げをしなかったスラックスについては、針と糸を使って自分で裾上げに挑戦してみるのも良いでしょう。

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